ギャンブル等依存症と借金問題について
ギャンブル等依存症になると、本人の価値観が変化し、ギャンブル等を続けることが最も優先されてしまい、あらゆる方法でギャンブル等の資金を手に入れようとすることがあります。
例えば以下に示すもののうち、複数からお金を借りることが往々にしてあります。
- 銀行、信用金庫、JAなどの金融機関
- いわゆる消費者金融やサラ金と言われる貸金業者
- クレジットカードのキャッシングやローン(なお、クレジット枠の利用も借金と考えてください)
- 会社からの貸付
- 社会福祉協議会の生活福祉資金貸付
- 生命保険の契約者貸付
- 年金担保貸付
- 家族(親・配偶者・子ども・兄弟)、親戚、友人、知人
- ヤミ金融業者(違法な貸金業者) 等
※借り入れの全体像により借金の整理方法が決まります。特に、親戚・友人・知人からの借り入れも整理の対象となりえます。また、住宅ローン、自動車のローンなどギャンブル等以外の原因の借金や保証債務なども整理方法に影響を与えます。
また、自分の名前でお金を借りるだけではなく、以下のような方法でギャンブル等を続けるために金銭を得ることもあります。
- 生命保険を家族に無断で解約する
- 勝手に家族名義でお金を借りる
- 教育資金や奨学金など子ども名義の財産に手をつける
- クレジットで購入した物品を転売する
- 家族名義のクレジットカードを無断で使用する
- 家族のお金を盗む、勤務先のお金を横領する
- 預り金の流用
- 勤務先の財形貯蓄の解約等
債務整理について
「債務整理」とは、借金(債務)の額と支払い方法を見直すという意味で、金融機関などの債権者と交渉したり、裁判所に申し立てをしたりすることにより、将来の利息カット、借金の減額などを行う方法です。債務整理では友人・知人からの借り入れや保証債務など全ての借り入れを含めて処理することになり、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産の4種類があります。
法律の専門家(弁護士・司法書士)が、本人から債務整理の委任を受けた旨記載した受任通知(介入通知)を送れば、債権者からの借金の取り立てはストップしますが、信用情報機関(全国銀行個人信用情報センター、株式会社日本信用情報機構、株式会社シー・アイ・シー)に情報が登録され、その後の金融機関からの借り入れが困難になります。
なお、依頼する際の費用は、後述の民事法律扶助制度を利用する場合を除き、法律の専門家により異なります。
債務整理の 種類 |
概要 |
---|---|
任意整理 | 裁判所を利用せずに、法律専門家(弁護士・司法書士)に依頼して、今後の借金の支払いを、各債権者との個別の話し合いにより決め、決めた内容を書面化するという手続きです。借金の総額が比較的少なく、原則として今後分割して支払っていける場合に選択します。 |
特定調停 | 裁判所において、公正な立場の調停委員を介して、総債権者に対して、借金の額・支払い方法について話し合う手続きです。債権者数が多く個別の話し合いは難しいものの、借金の総額が比較的少なく、今後分割して支払っていける場合に選択します。実費は数千円程度で、法律専門家に依頼することなく、ご自身が裁判所に調停の申立てを行うこともできます。ただし、調停で決まった返済計画には、判決と同じ強制力がありますので、終了後、支払を確実に継続する必要が出てきます。 |
個人再生 | 裁判所に申し立て、一定額まで借金が減額される手続きで、定期的な家計収入がある方が選択できる手続きです。住宅ローンは、他の債権者への支払計画とは分けて、別途返済していくことができるので、住宅ローンのある方にも適した手続きです。また、どうしても自己破産できない事情のある方が、選択することもあります。複雑な手続きなので、法律の専門家に依頼することをお薦めします。 |
自己破産 | 裁判所に申し立て、価値のある資産(生活必需品などは除きます)は、お金に換えて各債権者の債権額に応じて平等に分配した上で、返済できない部分の借金の支払いを免除してもらう手続きです。資産よりも負債が大きく、返済ができない場合に選択します。複雑な手続きなので、法律の専門家に依頼することをお薦めします。 |
※いわゆる「ヤミ金」について
ヤミ金は、法律で定められた金利を超える高金利で貸付けを行います。そして、返済が少しでも遅れた場合には、勤務先や親きょうだい・親戚にまで脅迫まがいの厳しい取立てや嫌がらせなどを行い、精神的な追い込みをかけてきます。
ヤミ金との契約は原則無効(民法90条、貸金業法42条)ですので、返済は不要です。また、ヤミ金の悪質な取立行為は、脅迫罪、強要罪等の刑法犯に該当したり、貸金業法等の法律に触れ罰則が適用されたりする場合があります。厳しい取立てに対しては、法律の専門家に相談することはもちろん、最寄りの警察署か大阪府警察本部の悪質商法110番(06-6941-4592)に相談するよう助言しましょう。
※法的手続きのための費用が準備できない場合
収入や財産が少なく、法律の専門家に法的手続きを依頼する際のまとまった費用の準備が難しい場合には、費用立替えのための民事法律扶助制度を利用するよう助言してください。この制度は、司法支援センター(愛称:法テラス)からも申し込みができますし、法テラスの契約弁護士・司法書士であれば、法テラスを介さずに、民事法律扶助制度を利用できます。
また、収入や財産が法テラスの基準以上あり、民事法律扶助制度が利用できない場合でも、費用の分割支払いに応じてもらえることもありますので、相談してみてください。
周囲の人へ
ギャンブル等をするために作った借金を、安易に家族等の周囲が返済しないようにしましょう。安易な返済により、本人がギャンブル等に問題があることを自覚できなくなってしまいます。また、再度借り入れることができるようになるため、すぐにギャンブル等を再開し、簡単に借金を繰り返してしまうことがあります。
借金が発覚することで、本人もギャンブル等について問題があると気が付くきっかけになります。
なお、(連帯)保証人や連帯債務者になっていなければ、家族に返済の義務はありません。
支援者の方へ
- 「借金の問題は必ず解決できます。」まずはこの言葉で本人や家族をエンパワメントしましょう。
- 債務整理は、借金をしている人の負債総額はもちろん、収入、資産、支出の状況などによって対応が変わり、個別性が高いものです。債務整理について扱っている機関以外の支援者の判断だけで、特定の方法が使えると本人や家族に伝えるのは控えましょう。
- 債務整理の専門の相談窓口(別紙「ギャンブル等依存症の相談窓口・自助グループ等」参照)等につないだ後は、返済の状況についての報告を受けて、本人が回復に向けて取り組んでいる点や、返済を始めているのであればその点を評価しましょう。
- 借金の返済が終わってからでないと、何も相談支援ができないわけではありません。また、ギャンブル等に頼らざるを得ないつらさやしんどさを解決しないまま借金だけを返済しても、また借金を繰り返すことも多く、問題を悪化させるだけです。借金の返済は、ギャンブル等依存症の問題の一部と捉え、本人がギャンブル等に頼らざるを得ないつらさに寄り添った相談支援を継続しましょう。
※このページは、大阪府こころの健康総合センター作成の冊子「ギャンブル等の問題で困っている人への支援のポイント」から抜粋しています。